パッケージデザインは商品を保護するだけでなく、企業と消費者を結ぶ重要な役割を果たします。商品制作の背景にあるストーリーや価値を伝えることで、消費者に新たな体験や感動を提供するのです。
とはいえ、「他社との差別化」や「売上アップに効果的なデザインの制作」についての悩みを持つ方も多いでしょう。
そこで今回は、パッケージデザインの5つの役割と売れるパッケージデザインプロセスを解説します。デザイナーやマーケターの方はぜひ参考にしてください。
パッケージデザインの5つの役割
まずは、パッケージデザインの5つの役割を見ていきましょう。
- パッケージデザインの役割①『商品の価値を伝える』
- パッケージデザインの役割②『商品の世界観を伝える』
- パッケージデザインの役割③『商品プロモーション』
- パッケージデザインの役割④『付加価値を伝える』
- パッケージデザインの役割⑤『ブランドをイメージ付ける』
パッケージデザインの役割①『商品の価値を伝える』
パッケージデザインは、商品の価値を視覚的に伝える重要な役割を持っています。消費者にとって商品選択の際に大きな影響を与える要素です。主に「機能的な価値」と「情緒的な価値」の役割を担います。
機能的な価値を伝える
「機能的な価値」とは、商品自体を保護・保存したり、商品の機能や特徴をパッケージを通して明確に伝えたりする役割を意味します。
たとえば、食品の栄養成分や化粧品の成分などが一目見ただけで伝わると、消費者はその商品の特性を理解しやすいでしょう。
情緒的な価値を伝える
パッケージデザインは、感情に訴え購買意欲を刺激する「情緒的な価値」をもちます。
たとえば、黒や茶色を使用した高級感あるデザインは目上の方に、ポップな色使いの可愛らしいデザインなら若いターゲット層が「買ってみたい!」という衝動に駆られるでしょう。
つまり「購入後のストーリー」を想像させることで、消費者の購買欲を高めるのです。
パッケージデザインの役割②『商品の世界観を伝える』
パッケージデザインは商品の世界観やコンセプトを視覚的に表現します。コンセプトとは、どのような人が、どのようなシーンで使うかを明確にすることです。
たとえば「自然由来の飲料」なら、土・光・空・雨を色で表現し、麻を配合した自然素材を使用します。これにより中高年の健康志向の消費者が「オーガニックで体に良さそう」「毎日飲みたい」と感じ、購買意欲が高まるのです。
パッケージデザインの役割③『商品プロモーション』
パッケージデザインは商品プロモーションツールであり、SNSやWEB広告など多くの媒体で目につくため重要です。大切なのは「商品の価値」と「伝えたい情報」に焦点を当てることです。
商品の価値を盛り込む
商品の魅力や特徴をパッケージに盛り込み、消費者に対して価値をアピールします。
たとえば、栄養補助食品なら「高たんぱく」「低カロリー」「ビタミン豊富」などの文字が目に入ると機能性が伝わりますよね。
地方の特産品なら「地元の風景」や「特産品のイラスト」を使うと、地域特有の魅力を伝えられるでしょう。
伝えたい情報を盛り込む
パッケージデザインは、消費者と企業を結ぶコミュニケーションツールです。商品の特徴において「これだけは消費者に伝えたい」というポイントを明確にする必要があります。
商品名、ブランドロゴ、キャッチコピーなど、伝えたい情報を的確に盛り込むことで、消費者に分かりやすく訴求しましょう。
パッケージデザインの役割④『付加価値を伝える』
パッケージデザインは「商品の付加価値」を伝える役割も果たします。商品の付加価値とは、以下の3つです。
- 体験価値
- 経験価値
- 企業価値
付加価値をパッケージデザインで伝えることで、消費者は商品の魅力をより一層感じられるでしょう。
体験価値を伝える(ギフトや贈り物)
ギフトや贈り物などは、「もらって嬉しい」「貴重な機会」などの体験価値をパッケージで伝えることが重要です。
たとえば、iPhoneのパッケージは、箱を開けるときのスムーズな動きが「開封体験」を特別なものにしています。高級チョコレートブランドのゴディバは、上質なボックスにゴールドリボンで「高級感と特別感」を体験できるでしょう。
経験価値を伝える(地域性)
経験価値とは、商品を得てから廃棄するまでの経験です。
地域性でいうと、京都の特産品「八ツ橋」のパッケージには寺院や紅葉の風景を描き、京都旅行の思い出を呼び起こします。お土産として渡す際、地域特性が反映されたデザインは開封時の楽しさを与えるでしょう。
「商品の向こう側の物語」を伝え、消費者に特別な経験価値を与えることが重要です。
企業価値を伝える(環境への配慮やSDGs)
環境に配慮した素材やデザイン、そしてSDGs(持続可能な開発目標)への取組みは、企業の社会的責任を示し、消費者に対して信頼感を与えます。
SDGsのロゴをパッケージに取り入れたり、「SDGs達成に向けた取り組み」として具体的な目標や達成状況を掲載したりすると、企業の環境への取組みを効果的に伝えられるでしょう。
パッケージデザインの役割⑤『ブランドをイメージ付ける』
ブランドオリジナルのイメージを消費者に定着させることも、パッケージデザインの重要な役割です。
たとえば緑茶飲料メーカーなら、深く渋い緑色と細かい明朝体のロゴのパッケージデザインで、メーカーの茶葉へのこだわりを表現できます。
全国チェーンのコーヒーショップなら、パッケージの大きなロゴが目を引き、持ち歩くことでプロモーション効果も相まってブランドを強く印象付けるでしょう。
このように、一貫性のあるパッケージデザインはブランド認知を高める一助となるのです。
売れるパッケージデザインを作るプロセス
売れるパッケージデザインでとくに重要なのが「マーケティング力」。以下に売れるパッケージデザインを作るプロセスを解説します。
- プロセス①パッケージデザインに消費者ニーズを取り入れる
- プロセス②パッケージデザインでブランド認知を促す
- プロセス③バイヤーの目を引くパッケージデザインとする
- プロセス④パッケージデザインで新たなターゲット層をつかむ
- プロセス⑤売れるパッケージデザイン=マーケティング力+デザイン力
プロセス①パッケージデザインに消費者ニーズを取り入れる
消費者が何を求めているのかを把握し、それに応えるデザインを作ることが重要です。
- 未来のお客様が何を求めているのか
- 手に取ったときにどう感じるのか
上記2点をイメージし、消費者ニーズを上手く取り入れましょう。
未来のお客様が何を求めているのか
最終的な未来の売り場や、未来のお客様が何を求めているのかに対して、仮説を立てましょう。市場調査やアンケートを通じて消費者のニーズを分析することが有効です。
最近では、利便性やデジタル化が注目されています。開封が容易で再封可能なデザインや、QRコードで情報を取得できる体験価値の提供などが挙げられます。
手に取ったときにどう感じるのか
「手に取った時の持ちやすさ」「ブランドイメージと素材感を統一」など、商品を手に取った時の感触や印象もデザインに反映させます。商品への興味や購買意欲を高める効果があるからです。
商品のコンセプトに応じて、以下の要素を上手く組み合わせましょう。
- 質感や素材
- 重さや安定感
- フォルムやサイズ感
- 色やデザインの統一感
プロセス②パッケージデザインでブランド認知を促す
無数の商品陳列から目を引く、独自性のあるパッケージデザインで、ブランド認知を促します。とくに「他社と差別化できるデザイン」に「自社の強みをパッケージに落とし込む」ことが重要です。
他社と差別化できるパッケージデザイン
競合他社との差別化を図るために、ユニークで目を引くデザインを考案しましょう。
たとえば、以下を参考にしてください。
- 独自性のあるデザインやアートワーク
- 珍しい素材や形状の採用
- 商品のストーリーやブランドメッセージ
- QRコードなどデジタル要素の追加
複数の組み合わせで、オリジナリティの高いパッケージデザインが作れます。
自社の強みをパッケージデザインに落とし込む
ブランドの強みや特徴をパッケージに落とし込むと、消費者に対して明確なメッセージとなります。
たとえば「特許技術」が強みだとしたら、特許取得を示すアイコンやグラフィックで商品の品質や独自性を強調できます。
また、自社の得意領域をアピールするなら、満足度の高いレビューやテスト結果をパッケージデザインに反映させる方法が効果的です。
プロセス③バイヤーの目を引くパッケージデザインとする
販促効果を最大化するには、バイヤーの目を引くパッケージデザインが必要です。
目立つ鮮やかな色彩やポップなデザイン、美しい写真やグラフィック、他の商品とは一線を画す独自の形状が効果的。
さらに、分かりやすいフォントやレイアウトも重要です。バイヤーが情報を瞬間的に把握でき、目の肥えたバイヤーの目に止まりやすくなるでしょう。
プロセス④パッケージデザインで新たなターゲット層をつかむ
新たなターゲット層を掴むには、市場調査に基づいたターゲット層に適したデザイン制作が必要です。
たとえば、若年層にはトレンディでカジュアルなデザインが、エコ意識の高い消費者には自然素材やシンプルなデザインが適しています。
また、コラボレーションパッケージなどの限定版も、新たなターゲット層の関心を引く効果があります。
プロセス⑤売れるパッケージデザイン=マーケティング力+デザイン力
デザインだけでなく、売れるパッケージデザインを作るためには「マーケティング力」が不可欠です。いかに優れたデザインでも販促を最大化しなければ多くの人の目に止まらず、売上にも繋がりにくくなります。
約8割の人がスマホを保有(総務省、2022年)し、約7割(総務省、2021年)の人がスマホでインターネット利用している現代では、販売チャネルとしてはSNSやWEB広告が効果的です*。SNS拡散でさらに注目を集める可能性も。
2021年にはインターネット広告費がマスメディアを上回り、オンライン市場への注力が増しています。
出典:総務省「令和4年『情報通信に関する現状報告』」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/summary/summary01.pdf
したがって「売れるパッケージデザイン」は、消費者ニーズを的確に把握し、課題解決に向けたデザインを作ることに加え、WEB広告やSNSを活用して販促効果を最大化するマーケティング戦略が必要です。
* 総務省 「令和5年 情報通信に関する現状報告」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/summary/summary01.pdf
総務省「令和4年版 情報通信白書 データ集(第3章第8節)」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nf308000.html#d0308040
パッケージデザインを売上に繋げるためのポイント
売上へ繋げるパッケージデザインは、長期的・継続的に消費者の目に止まる必要があります。以下の2つのポイントを抑えましょう。
- ポイント①パッケージデザインは商品サイクルによって変える
- ポイント②パッケージデザインでブランド戦略を行う
順に解説します。
ポイント①パッケージデザインは商品サイクルによって変える
パッケージデザインは、商品サイクルの異なる段階で変更しましょう。
販売直後は販促的な役割を重視し、商品の特徴やメリットを明確に伝えるデザインが求められます。その後、商品が市場に定着したらブランディング的な役割にシフトし、ブランド価値を強化するデザインに変更するのです。
そうすることで、企業の持続的な成長と顧客ロイヤルティ(特定の企業や商品・サービスに対する顧客からの信頼・愛着)向上を促進できます。
ポイント②パッケージデザインでブランド戦略を行う
商品が市場に浸透し、一定の売上を達成すると、次のステップとしてブランディング戦略が重要です。
パッケージデザインを通じて、ブランドの価値やイメージを強化することに焦点を当てるのです。
シンプルで洗練されたデザインやブランドロゴを強調することで、商品の高級感や信頼性を高めることができるでしょう。
また、エコ素材(環境に配慮した素材)の使用はブランドの社会的責任を示し、環境に配慮した企業イメージの構築へ繋がります。
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