奈良市にある自然栽培・有機栽培茶の専門店「TE = CHA(テ イコール チャ)」のデザインを担当したデザイナーにインタビューしました。
店舗名
TE = CHA
クライアントさまの情報
店名:TE = CHA(テ イコール チャ)
住所:奈良県奈良市神功3丁目3-2
営業時間
(有人販売)水曜・土曜 10時〜18時
(無人販売)毎日9時頃~21時頃
ホームページ
http://www.teandcha.com/
奈良市にある自然栽培・有機栽培茶の専門店。日本茶インストラクターの中島 由紀子さんが、お一人で切り盛りされています。
相談内容
「見たことのないパッケージで、
これまで手に取る機会のなかった人に、自然栽培のお茶を届けたいんです」
2012年にオープンしたTE = CHA。
その名前には、次のような意味と思いが込められています。
「世界で茶を意味する言葉は、『TE』と『CHA』という2つの系統にわけることができ、その語源はどちらも『茶』という漢字です。また紅茶、緑茶、烏龍茶といったいろいろなお茶も、もとは一つのお茶の木からつくられるもの。わたしたちも、いろんな肌の色、文化、考えかたの違いがあっても、同じ人間。みんな仲良くしましょう、違いを楽しみましょう」
歴史を遡ると薬としても用いられ、好まれてきたお茶。中島さんもその力に惚れこんだ一人でした。奈良県内の自然栽培・有機栽培の茶農家さんを一軒一軒訪ね歩き、関係を育み、お茶を集めていきました。
自然栽培・有機栽培のお茶の魅力は、農薬や化学肥料を使わないことだけではありません。中島さんはお茶畑を訪ねるたびに、それぞれの茶農家さんがそれぞれの土地の自然に沿って、独自のやりかたで、おいしいお茶づくりに取り組む姿を目の当たりにしてきました。
これぞTE = CHAというオリジナルデザインをつくりたい。既存の商品では伝えきれなかった自然栽培・有機栽培の魅力を、今までにないパッケージで表現したい。そして、新たなお客さまに、自然栽培・有機栽培のお茶を味わってもらいたい。
そんな思いを、中島さんは募らせていました。
デザインのポイント
自然栽培・有機栽培の要は、環境にあります。大地を匂わせる茶色。そこに息づく微生物。茶葉を見ただけでは伝わりにくい、農家さんの手間ひまはもちろんのこと、茶畑に降り注ぐ光や空、雨などの自然界の中で起きている循環。お茶づくりを構成する風景を色と形で表現しています。
また、赤や青色には少しかすれた部分があります。実はこれ、意図しなかったハプニングのたまもの。プリンターの紙詰まりによって偶然かすれが生じたんです。でも、その紙を破棄しようとは思えなくて。むしろ、その美しい光線のような表現に驚きました。偶然性から生まれた美しさが、自然界のチカラをお借りするお茶の栽培方法とリンクしたように感じました。
中島さんからも、「にじみが織りなす人知を超えたデザインにしたいんです」という声を聞いていたんですね。思い切ってお見せしたところ、とても喜んでいただけました。
手のかけどころ
クライアントさまの“根”から
デザインが生まれる
わたしたちの屋号にあるubusunaは「生まれたところ」をあらわす日本の古語です。その言葉を「根っこ」や「本質」と解釈しています。
つまり、クライアントさまの根っこを掘り下げるところからデザインが生まれます。
はじめに「もっとお茶を売りたい」と話してくれた中島さん。
こんな話をしてくれました。
「この先も農家さんに安心して自然栽培・有機栽培のお茶づくりを続けてもらうために、もっといろんな人にお茶を売りたい。そのためにも、自然栽培・有機栽培の魅力が伝わるオリジナル商品を開発したい。より高付加価値な販路を開拓したいんです」
なぜこの仕事をはじめたのか。今まで何を大切にしてきたのか。今はどんなことを考えていて、この先どうなっていきたいのか。ubusunaの事務所で手を動かしながら、お茶を飲みながら、デザインが生まれていきました。
その後の展開
お客さまの声
オリジナルの商品をつくったことで、TE = CHAの認知度がぐんと高まりました。「そのパッケージ、見たことあります!」と声をかけていただく機会が、ほんとうに増えたんですよ。
おかげで、奈良 蔦屋書店でのフェア開催にもつながりました。ubusunaさんと出会わなかったら、生まれていないこのデザイン。いつの間にか一人歩きして、あちこちで新たな出会いを生んでいるみたいです。
今では、このデザインをお店や駐車場サインにも展開しています。車で前を通った人にTE = CHAを認知してもらい、フェアで商品を買っていただく。そんな購入のグッドサイクルが生まれています。
ubusunaの声
商品そのものが広告となり、TE = CHAのブランディングにもつながっています。デザインが変わると、お客さんの層が広がるんですね。
クライアントさまご自身の根っこを掘り下げてつくった商品は、どこかご自分の分身のようにも感じられます。クライアントさまご自身と商品のあいだにズレがないからこそ、周りの人にも自信を持ってすすめたくなるんですね。根っこを掘り下げ、デザインを生みだし、広まっていく。そのサイクルをつくり出すことも、デザインの役割のひとつだと考えています。