マカデミアナッツ輸入のパイオニアでもある商社より、マカデミアナッツのパッケージデザインのリニューアルについて相談があった例についてご紹介します。
商品名
殻付きマカデミアナッツ 殻割り器付き
クライアントさまの情報
株式会社ニダフジャパン
日本におけるマカデミアナッツ輸入商社のパイオニア。ケニア、マラウィ、南アフリカ、オーストラリアなどの生産者と独自のネットワークを築き、輸入販売を行っている。
相談内容
「ライバル社の商品と間違えられることがないよう、
パッケージをリニューアルしたいんです。」
日本におけるマカデミアナッツのパイオニア、株式会社ニダフジャパン。1985年の設立以来、スナックや製菓材料としての食文化を育ててきました。
卸売を行うかたわらで、自社のオリジナル商品として販売するのが「殻付きマカデミアナッツ 殻割り器付き」。購入者自身がマカデミアナッツの殻(から)を割って食べるという体験型商品です。
当時のパッケージは、サイズと形状が違ったグレーの箱とワインレッドの箱の2種類。ニダフジャパンにはこんな困りごとがありました。
「グレーの箱はデパートやスーパーの壁の色と似ていて、大きなスペースでは目立たない。ワインレッドの箱はといえばライバル会社の箱と似ていたので間違えて購入してしまうお客さまもよくいらっしゃるぐらいでした。」
リニューアルにあたっての要望は2点。
「小売店でお客さまの目をひくデザイン」と「他社製品との差別化」でした。
デザインのポイント
差別化を考える上で、注目したのが専用の殻割り器です。
マカデミアナッツは、市販品のほとんどが剥き身で販売されています。しかし、本当は「世界一硬い」と言われている殻を割って食べる剥きたてが最高に美味しい。甘くて、香りもよくて。割るときの「カッキーン!」という音さえも、味わいになるんです。
そこで、丸みを帯びてどこか人懐っこい殻割り器に、パッケージの“顔”となってもらいました。
小売店でお客さまが商品を選ぶ時間は、ほんの数秒です。
その数秒の間に目にとまる配色を考えました。店頭に並んだとき、黄色い丸が確実に目立つようにするためベースカラーは濃い茶色。そのベースカラーはナッツの殻の色味からヒントを得ました。
結果的に店頭では緊張感のある黄色い丸がしっかりと浮かび上がります。
つぎに、目にとまった後の印象とわかりやすさのデザインです。
お客さまの気持ちをクスリとほころばせつつ、ほどよい緊張感を持って自己紹介をする。そんなデザインを考えました。
商品名は、年齢や性別を問わず親しみを感じさせる手書きを採用。さらに殻割り器のマークの表現はアナログな手法を施すことで素朴感を持たせ、お客さまの情緒にはたらきかけます。
つづけて窓付きの箱には、初めて購入する方にもわかりやすいよう「殻付きのまま深煎り」「割って食べる」ということばを直球で記し、簡潔に商品情報を説明します。
さらに商品を気に入っていただいた方が友人などにプレゼントすることを想定し、あえて中を見せないでワクワク感を持たせる窓なしを考えました。
こうしてさまざまなことを必要性に応じてデザインしていくと、他社製品との差別化にも結果的に繋がります。
このように、ビジュアル面での緊張と緩和、そして伝わりやすさ、それぞれのちょうどよいさじ加減が、売れやすいデザインを生みます。
手のかけどころ
クライアントさまと一緒に航海を楽しむ
「デザインってこんなに楽しいものなんですね!」というクライアントさまの声が、わたしたちの一番のうれしいことかもしれません。(そう、デザインって楽しいんです!)
わたしたちのデザインワークは「実験、発見、デザイン」という流れで進んでいきます。
まずは実験。クライアントさまといっしょに、子どもになって手を動かしはじめます。すると、必ず新発見があります。実験の手ざわりと新発見を、大人に戻ってかたちにしていくのがデザインです。
航海のようなデザインワークを、クライアントさまとともに進めていきます。
遭難することのないように、わたしたちがしっかりと導きます。一緒に手を動かしながら、最初の相談時には島影さえ見えていなかった新大陸へとたどり着けたらうれしいです。
その後の展開
お客さまの声
2012年にパッケージをリニューアルして以来、売上は着実に伸びています。
展示会に出展すると「社名は思い出せないんですけど……あの黄色い丸のナッツね!」と、パッケージを思い出していただくことがたびたびあります。
また、リニューアルはエンゲージメント(社員の誇り)にもつながっています。引き合いが増え、売上げが伸びていくことで、社員のモチベーションも高まったようです。
ubusunaの声
わたしたちは、「よい仕事はフラットな関係から生まれる」と考えています。デザインワークを通じて、クライアントさまとubusunaの間に信頼関係が生まれて仕上がったデザイン物は、その後クライアントさまの社内コミュニケーションを円滑にする役割をも果たしてくれます。
社内コミュニケーションが円滑になると社内に信頼関係が生まれます。そんな輪がどんどん広がると、必然的に一人ひとりの仕事がよりよいものになっていく。そんな好循環を生むきっかけ作りもデザインの役割のひとつだと考えています。